大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成9年(ワ)4708号 判決 1999年3月10日

原告

近藤友佳

被告

近藤吉一

ほか四名

主文

一  被告後藤吉一、同後藤勝正は、原告に対し、各自金三一六万九二六三円及びこれに対する平成六年一二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告歌川盛己、同歌川陽亮、同歌川敏子は、原告に対し、各自金二八三万八五一三円及びこれに対する平成六年一二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを一〇分し、その七を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

五  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、各自、金一〇〇八万四九七八円及びこれに対する平成六年一二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が左記一1の交通事故の発生を理由に被告後藤吉一及び被告歌川盛己に対し自賠法三条・民法七〇九条、被告後藤勝正に対し自賠法三条、被告歌川陽亮及び被告歌川敏子に対し民法七〇九条により損害賠償請求をする事案である。

一  争いのない事実

1  交通事故

(一) 日時 平成六年一二月一三日午後一〇時三五分ころ

(二) 場所 名古屋市天白区平針三丁目九一三先道路上

(三) 第一車両 被告後藤吉一運転の普通乗用自動車

(四) 第二車両 被告歌川盛己運転、原告同乗の原動機付自転車

(五) 事故態様 第二車両が本件事故現場の交差点を西から東に向けて直進中、東から西に向けて進行して同交差点で右折しようとした第一車両と衝突したもの。

2  責任原因

(一) 被告後藤吉一は第一車両を、被告歌川盛己は第二車両をいずれも自己のために運行の用に供する者である。

(二) 被告後藤吉一は、交差点において前方注視義務、安全運転注意義務に違反して対向車線の交通の安全を確認せずに右折した過失がある。被告歌川盛己は、交差点において前方注視義務及び安全運転注意義務に違反して直進した過失がある。

(三) 被告後藤勝正は、第一車両の所有者である。

3  当事者

被告歌川盛己は、本件事故当時一七歳であり、被告歌川陽亮及び同歌川敏子は被告歌川盛己の父母である。

4  損害

原告は、本件事故により右大腿骨開放骨折、肺挫傷、腹部外傷等の傷害を負い、藤田保健衛生大学附属病院において入・通院治療を受け、その治療費として八六万七六九〇円、装具、文書料等の雑費として三万八八六〇円を要した。

二  争点

1  被告らは、本件事故による原告の損害額(右の争いのない部分を除く。)を争う。

2  原告は、被告歌川陽亮及び同歌川敏子について被告歌川盛己に対する監督義務違反があったと主張する。これに対し、被告歌川陽亮及び同歌川敏子は、監督義務はなく、仮に監督義務があったとしても義務をつくしていたと主張する。

3  被告後藤吉一及び同後藤勝正は、原告が事故発生の危険が極めて高いことを知りながらあえて第二車両に二人乗りしたものであるとして過失相殺を主張し、原告はこれを争う。

4  被告歌川盛己、同歌川陽亮、同歌川敏子は、原告が第二車両に同乗した経緯に照らし、好意同乗による減額が認められるべきと主張するとともに、本件事故についての被告歌川盛己の過失は被告後藤吉一に比べて著しく低いから、原告との関係でもその過失割合に応じて分割された責任を負うに過ぎないと主張し、源告はこれをいずれも争う。

第三争点に対する判断

(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証については、その旨記載することを省略する。)

一  原告の損害

1  治療費八六万七六九〇円(争いのない事実)

2  入院雑費(請求額一三万一三〇〇円) 一三万二六〇〇円

甲第三号証、第四号証、弁論の全趣旨によれば、原告は本件事故による傷害の治療のために藤田保健衛生大学附属病院に三回にわたり合計一〇二日間入院治療したことが認められる。したがって、入院雑費として一日当たり一三〇〇円、合計一三万二六〇〇円を本件事故と相当因果関係に立つ損害として認めるのが相当である。

3  通院交通費(請求額四万八九六〇円) 四万八九六〇円

甲第一〇号証の一ないし一〇、第二〇号証の一ないし六、乙第一二号証の一ないし二四、弁論の全趣旨を総合すると、原告は本件事故による傷害の治療のために前記病院に合計八九日間通院治療したことが認められる。

甲第一〇号証の一ないし一〇、第一一号証の一ないし五四、第二〇号証の一ないし六、弁論の全趣旨を総合すると、この間の通院交通費としてタクシー代二万八七二〇円、自家用車による送迎費用一万九四四〇円、駐車料八〇〇円合計四万八九六〇円を本件事故と相当因果関係に立つ損害として認めるのが相当である。

4  雑費三万八八六〇円(争いのない事実)

5  休業損害(請求額一三八万一五八二円) 一〇三万八八四九円

甲第一三号証の一、二、第一九号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、本件事故当時露天商手伝いとして稼働しており、直近の三か月間の収入が四九万五〇〇〇円(一日当たり五四三九円)であったこと、本件事故後、平成七年八月にはいったん稼働を再開し、通院期間中も収入を得ている時期のあることが認められる。これらの事実に照らすと、原告の休業損害として前記の入院合計一〇二日・通院合計八九日について、事故直前の収入に基づき休業損害として一〇三万八八四九円を認めるのが相当である。

191×5,439=1,038,849

6  後遺障害による逸失利益(請求額三八八万六八八〇円) 零円

原告は、本件事故により<1>下肢の醜状<2>右膝関節の可動域の制限<3>右股関節の機能障害及び長管骨の奇形の各後遺障害があると主張し、甲第六、第七、第一五ないし第一七号証によれば、右<1>ないし<3>の状況があることは認められる。しかし、甲第一七号証、甲第一三号証の二、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すると、<1>により原告の稼働能力が低下したものとは認められず、<2>、<3>についても、これにより現に稼働能力の低下があるとは認めることができない。

7  慰謝料(請求―入通院三〇〇万円、後遺障害一〇〇万円) 入通院二一五万円、後遺障害三〇万円

前記認定の入通院の状況に照らすと、原告の入通院慰謝料として二一五万円が相当である。また、右6に認定の後遺障害の状況、特に<2>及び<3>の状況に照らすと後遺障害慰謝料として三〇万円を認めるのが相当である。

8  合計

四五七万六九五九円

二  過失相殺、好意同乗

1  事故に至る状況及び事故態様

甲第一九号証、乙第一ないし第六、第一一号証、丙第一号証、原告本人、被告後藤吉一、同歌川盛己(後記信用しない部分を除く。)各本人尋問の結果、前掲争いのない事実、弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。

(一) 本件事故当時、本件事故現場付近は、交差点の中は灯火で明るいもののその外は暗く、特に交差点の北方は街灯がないことから交差点部分から北方の見とおしはきかなかった。

(二) 被告後藤吉一は、青色信号に従い本件事故現場交差点中央付近で右折するために右ウインカーを出して停止して対向車線の状況を見ていたところ、対向車線を走行する車が通り過ぎたことから、後続車はないものと判断して直ちに発進して右折を開始した。しかし、対向車線に入った直後に第二車両が進行してくるのを約一一・二メートル先に認め、直ちに急ブレーキをかけたものの回避することができずに衝突した。

(三) 被告歌川盛己と原告とは遊び友達であるところ、本件事故の当日、第二車両に同乗して名古屋市天白区のカラオケ店に赴いて友人達と遊んだ後、原告の依頼により被告歌川盛己が原告を実家まで送るために、第二車両に同乗して本件事故現場に至った。被告歌川盛己の自宅は、カラオケ店を起点として原告の実家と反対方向であった。

(四) 被告歌川盛己は第二車両後部に原告を同乗させ、時速五〇ないし六〇キロメートルで走行し、青色信号に従い北方から本件交差点に進行して第一車両と衝突した。両名はヘルメットを装着していなかった。

被告歌川盛己は走行時に第二車両のヘッドライトはついていたと思うと述べ、同人の父である被告歌川陽亮は事故後事故現場に放置してあった第二車両を点検したところヘッドライトのスイッチは入っていたと述べる。しかし、被告後藤吉一の供述によれば、同人は対向車線の後続車両の有無を確認したにもかかわらず右折開始後突然第二車両が進行してきたように思えたことから第二車両のヘツドライトが点灯していなかったのではないかと疑問に思い、事故直後に第二車両のライトに触れたところ、ライトに温もりがなかったと述べていること、被告歌川盛己自身警察の取調べに対して「前照灯はつけていたつもりですが、つけていなかったかも知れません。」、「この事故を起こした原因は、私が原付に二人のりをして、ヘルメットをかぶらずスピードを出しすぎていたこと、無灯火だったことなどありますが、交差点ですから、右折車にもう少し注意が足りなかったと思います。」と述べて無灯火を認めていること、被告歌川盛己はこの取調べ時の供述は真意ではないと述べるが、なぜ無灯火を認めたのかにつき納得のいく説明のないことに照らすと、点灯していたと思うとの被告歌川盛己の供述は信用することができない。

2  過失相殺

右に認定の事実に照らすと、原告には、被告歌川盛己が制限時速を大幅に上回るスピードで走行するのを何ら制限しなかった過失があると認められるから、前記の損害額から一〇パーセントの過失相殺をするのが相当である。

被告後藤吉一及び同後藤勝正は、右のほかに原告は法律上原動機付自転車の二人乗りが禁止されていることを承知の上で、ヘルメツトもかぶらないまま第二車両に同乗し、無灯火で信号無視をするなどの無謀運転を被告歌川盛己に許した過失があると主張する。しかし、二人乗りが本件事故に影響を及ぼしたと認めるに足る証拠はなく、ヘルメットの不装着は、原告の受傷の状況が腹部よりも下であることに照らすと、原告の過失として考慮するべきとは認められない。また、原告が無灯火について気づいていたと認めるに足る証拠はなく、信号無視の点は被告後藤吉一がこれに沿う話を事故現場で目撃者から聞いた旨述べるが、被告歌川盛己自身はこれを否定しており、右の目撃者の目撃の状況等の詳細は不明であること、また、直前の信号を無視して走行してきたことが本件事故の結果に直接影響するものではないことから、これらについては原告の過失として考慮するのは相当ではない。

3  好意同乗減額

前記認定の同乗に至る経緯に照らすと、被告歌川盛己との関係で、前記認定の原告の損害額のうち慰謝料の一五パーセントを減額するのが相当である。

なお、被告歌川盛己は過失割合に応じた分割責任を主張するが、被告後藤吉一の責任と被告歌川盛己の責任とは不真正連帯の関係にあり、被害者救済の趣旨からして、過失割合に従った減額は相当とは認められない。

4  小計

したがって、被告後藤吉一、同後藤勝正は四一一万九二六三円、被告歌川盛己は三七八万八五一三円の損害賠償責任を負う。

4,576,959×90%=4,119,263.1

{4,576,959-(2,150,000+300,000)×15%}×90%=3,788,513.1

三  被告歌川陽亮、同歌川敏子の責任

前掲各証拠、被告歌川盛己及び同歌川陽亮各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告歌川盛己は、本件事故当時未成年であり、住み込みで稼働していたものの休日には実家である被告歌川陽亮、同歌川敏子の元に帰って来ていたこと、第二車両はその実家に保管され、実家で遊びに出る際に使用されていたこと、被告歌川盛己が最初に使用していた原動機付自転車は被告歌川陽亮が買い与えたものであること、第二車両はナンバープレートがはずされ、これを用いて無謀な運転行為が行われることが容易に知りうる状況に有りながら、被告歌川陽亮、同歌川敏子は第二車両を点検することもなく、被告歌川盛己に対して二人乗りはするな、スピードを出すななどと口頭で注意を与えるのみで終始していたことが認められる。これらの事情に照らすと、本件事故につき被告歌川陽亮、同歌川敏子は被告歌川盛己の親権者として監督義務があり、その義務に違反したことが認められるから、被告歌川陽亮、同歌川敏子も被告歌川盛己の損害賠償額と同額について原告に賠償する責任負うものと認めるのが相当である。

四  損害の填補

原告は既払金八八万八五七〇円及び自賠責既払い三一万一四三〇円合計一二〇万円を自認することから、これを前記の賠償額から控除すると、被告後藤吉一、同後藤勝正については二九一万九二六三円、被告歌川盛己、同歌川陽亮、同歌川敏子は二五八万八五一三円の損害賠償責任を負うこととなる。

五  弁護士費用(請求九五万円) 二五万円

弁論の全趣旨により認められる本件事故の状況及び右の損害賠償の内容に照らすと、弁護士費用として二五万円を本件事故と相当因果関係に立つ損害として認めるのが相当である。

六  結論

以上によれば、原告の請求は、被告後藤吉一、同後藤勝正に対して三一六万九二六三円、被告歌川盛己、同歌川陽亮、同歌川敏子に対して二八三万八五一三円の範囲で理由がある。

(裁判官 堀内照美)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例